賃貸管理の夜間電話を外注するといくらかかる?5つの選択肢と費用相場を比較【当番制・留守電・電話代行・アプリ・AI】
夜間・時間外の入居者電話をどう受けるか。本記事では、賃貸管理会社が現実に取っている5つの選択肢を、公表されている費用相場と「向いている会社・向いていない会社」までセットで比較します。金額はすべて公表情報で、時点・条件により変動します(税込/税別は出典の表記に従います)。数字には出典番号を付し、末尾の出典一覧で確認できます。
先にお伝えすること
筆者は選択肢の一つであるAI電話(ルスバンAI)を開発中の立場です(導入実績はまだありません)。本記事はAI電話を推す記事ではなく、5つの選択肢を同じ物差しで並べることを方針とし、AI電話が向かない会社も明記しています。
夜間・時間外の電話対応には、どんな選択肢があるか?
実務上は「当番制」「留守電」「人力の電話代行」「入居者アプリ」「AI電話」の5つに整理でき、単独ではなく組み合わせるのが実態です。
5つの選択肢と公表されている費用の目安を一覧にすると、次の通りです。
| 選択肢 | 費用の目安(公表値) | 向いている会社 | 向いていない会社 |
|---|---|---|---|
| A. 社員の当番制・携帯転送 | 外部費用ゼロ。ただし当番手当・代休・採用への影響という見えないコスト | 管理戸数が少なく夜間入電が月数件以内の会社 | 呼び出しが常態化している会社。特定社員に負担が偏っている会社 |
| B. 留守電・翌朝対応 | 電話設備費のみ | 夜間入電がほぼゼロで、緊急連絡の別経路(サポート会社等)がある会社 | 緊急案件(水漏れ・鍵・火災)が留守電に入るおそれのある会社 |
| C. 人力の電話代行・入居者コールセンター | 汎用代行: 月額3,000円〜10万円程度+従量[10]。不動産特化例: 月額23,100円(税込)〜・100件超過分は1件420円(税別)[11] | 件数が多く、応対品質と駆けつけ連携まで任せたい会社 | 件数が少なく固定費が割高になる会社。委託先の応対を自社色にしたい会社 |
| D. 入居者アプリ・チャット | 価格は非公表が中心(totono等)。導入125社・電話一次対応8割減の事例あり[15] | 若年入居者が多く、DL率向上の運用をやり切れる会社 | 高齢入居者が多い会社。アプリ登録運用に人手を割けない会社。緊急電話は別途必要 |
| E. AI電話(音声AI一次受付) | 汎用IVR/AI電話: 月額2,980円〜(年払い時3,317円/月)[12]。AI+24時間有人+駆けつけ複合: 1戸390円/月(税別)〜[13] | 夜間だけの一次受付・トリアージを低コストで足したい会社 | 応対のすべてをAIに任せたい会社(現状の技術・責任設計では非推奨) |
以下、各選択肢を順に見ていきます。
業界では、どんな委託のかたちが主流なのか?
大手入居者コールセンターでは契約の約8割が「夜間・休日など営業時間外のみ」の委託です。時間外のみの外部化が標準的な購買単位です[6]。
前提となる市場の規模感を、公表値で押さえておきます。
- 賃貸住宅管理業の登録業者は全国8,943社、登録事業者の管理戸数合計は約790万戸(令和4年度末時点)[3]。
- 国土交通省の令和6年度実態調査では、従業員数「5人以下」の小規模事業者の割合が最も高いことが確認されています[4]。夜間専任スタッフを置ける規模の会社は多数派ではありません。
- コールセンターサービス市場(事業者売上高ベース)は2024年度で1兆517億円[9]。この中に不動産・賃貸管理向けの入居者コールセンターが含まれます。
- 賃貸管理特化の例では、全宅管理が提携するTOKAIの入居者コールセンター「リセプションサービス」が約1,000社・登録約105万戸に利用されています[6]。
重要なのは、このTOKAIの公表インタビューで、契約の約8割が「夜間や休日など営業時間外のみ」を委託する形とされている点です[6]。日中は自社で受け(入居者・オーナーとの関係は自社の資産だから)、夜間・休日だけ受け皿を持つ――「時間外のみ」が業界の標準的な購買単位になっています。本記事が夜間・時間外に絞って比較するのはこのためです。
当番制・留守電なら、費用はかからないのか?
外部費用はゼロですが無料ではありません。当番手当・代休・採用への影響や、緊急案件が留守電に入るリスクという見えないコストがあります。
A. 当番制の本当のコストは金額に出ません。従業員5人以下の会社が最多の業界で[4]、夜間当番は特定個人への負担集中と採用難に直結します。「当番手当をいくら払っているか」ではなく、「当番が理由で辞めた・採れなかったことがあるか」で評価すべき選択肢です。
B. 留守電・翌朝対応は、「夜間入電が実際にほぼない」ことを記録で確認できているなら合理的です。一方で、水漏れ・鍵・火災といった緊急案件が留守電に入るおそれのある会社には向きません。緊急案件を留守電で受けてしまう構造リスクについては、失敗パターンとチェックリストの記事で詳しく扱っています。
人力の電話代行・入居者コールセンターはいくらかかるか?
汎用の電話代行は月額3,000円〜10万円程度+従量[10]、不動産特化では月額23,100円(税込)〜・100件超過分1件420円(税別)の公表例があります[11]。
費用の公表例は次の通りです。
- 汎用の電話代行(コールセンターアウトソーシング): 月額3,000円〜10万円程度+従量[10]
- 不動産・賃貸管理特化の例(ステップワイズ): 月額23,100円(税込)〜、100件超過分は1件420円(税別)で24時間365日対応[11]
- TOKAI型の「時間外のみ」委託も普及[6]
人力代行は最も成熟した選択肢で、応対品質・駆けつけ連携の面では現時点の水準が最も高い領域です。運用の要は次の2点です。
- 従量費用は冬場(凍結・給湯器故障の繁忙期)に膨らむこと
- 月次報告書で件数と内容を必ず検収すること
逆に、件数が少なく固定費が割高になる会社や、委託先の応対を自社色にしたい会社には向きません。
入居者アプリを入れれば、夜間の電話はなくなるのか?
なくなりません。先進事例でも電話一次対応8割減・DL率75%であり[15]、約25%の入居者と緊急時の電話の受け皿は別途必要です。
入居者アプリ「totono」(スマサポ)は2024年8月時点で契約125社・累計25万ダウンロード。導入企業のエヌアセットでは、入居者からの電話の一次対応が社内で8割減った一方、アプリのダウンロード率は導入半年で75%です[15]。価格は非公表が中心です。
アプリは「問い合わせの総量を減らす」施策であり、「夜間の緊急電話を受ける」施策ではありません。DL率75%の先進事例でも約25%の入居者はアプリ外に残り、緊急時・高齢入居者を中心に電話が第一手段であり続けます[15]。実態としては、電話代行(C)やAI電話(E)との併用になります。
大手も電話自体は捨てていません。レオパレス21は鍵の紛失・不具合の電話一次受付にAIボイスボットを導入し、繁忙期の応答率を2割改善、コストを2割削減したと公表しています(事業者公表値)[14]。
AI電話はいくらかかるか?どんな会社には向かないか?
汎用AI電話は月額2,980円〜[12]、AI+有人+駆けつけ複合型は1戸390円/月(税別)〜の公表例があります[13]。全面AI化したい会社には不向きです。
AI電話(音声AIによる一次受付)は、2023年以降に実運用が始まった最も新しい選択肢です。費用の公表例は次の通りです。
大手での運用実績(レオパレス21の鍵紛失一次受付[14])がある一方、汎用品から複合型まで価格も品質も幅が大きく、「何をAIに任せ、何を任せないか」の線引きが導入の成否を分けます。IVRy社自身も不動産業向けに、クレーム性の電話は音声で完結させずフォームへ誘導する等の設計を解説しており[12b]、「全部AIで受ける」が正解とは限りません。
正直に書くと、次のような会社にはAI電話は向きません。
- 応対のすべてをAIに任せたい会社。現状の技術・責任設計では非推奨です。AI置換で利用者の反発や誤案内の責任問題が公表されており、対策の型は失敗パターンの記事で整理しています。
- すでに人力代行で応対品質・駆けつけ連携まで満足している会社。人力代行は現時点で最も成熟した選択肢です。
- 夜間入電がほぼゼロであることを記録で確認できている会社。その場合は留守電+緊急経路の周知で足りる可能性があります。
なお、本記事の筆者はこのカテゴリに属する夜間AI電話「ルスバンAI」を開発中です(導入実績はまだありません)。夜間・時間外の一次受付に絞り、緊急時のみ担当者へ発報する設計で、大阪・関西圏の先行パートナーを募集している段階です。詳細はトップページをご覧ください。上記の「向かない会社」はルスバンAIにもそのまま当てはまります。
結局、どうやって選べばよいのか?
月あたりの夜間実件数と緊急案件の比率でほぼ決まります。まず1〜3ヶ月、着信の記録を取ってから選ぶのが定石です。
5つの選択肢に単独の正解はなく、組み合わせが実態です。判断の手順は次の通りです。
- 記録を取る: 夜間・時間外の着信件数を、感覚ではなく記録(留守電履歴・転送履歴・代行の月次報告)で1〜3ヶ月把握する。繁忙期(1〜2月の凍結・給湯器シーズン)を含められればなお良い。
- 件数と緊急比率で絞る: 月数件以内なら当番制・留守電の継続も合理的。件数が多く品質重視なら人力代行、総量削減ならアプリ併用、低コストの一次受付ならAI電話が候補になる。
- 収支を確認する: 入居者向け24時間サポート(相場は2年で約15,000〜20,000円[8])を販売している場合、入居者から集める料金と外部委託費の収支を把握する。委託費よりサポート料が上回る構造が一般的で、差額は管理会社側の収益になります[8]。体制選択はこの収益商品の原価管理の問題でもあります。
切り替え前の具体的な確認項目は、10項目チェックリストの記事にまとめています。
出典
番号は出典つき全文レポートの出典一覧と共通です。URLは2026年9月時点で確認したものです。
- 国土交通省 報道発表「賃貸住宅管理業者等への全国一斉立入検査結果(令和4年度)」(登録8,943社・約790万戸) https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001609599.pdf
- 国土交通省「令和6年度 不動産管理業に関する実態分析に係る調査検討業務 報告書(賃貸住宅管理業部分抜粋)」2025年3月 https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001900804.pdf
- 全宅管理ブログ「TOKAIリセプションサービス」紹介記事(約1,000社・105万戸、約8割が時間外のみ型) https://www.chinkan-support.com/?p=305
- LIFULL HOME'S「賃貸の24時間サポートは必須?」(相場: 2年で15,000〜20,000円) https://www.homes.co.jp/cont/rent/rent_00352/
- 矢野経済研究所プレスリリース「コールセンターサービス市場/コンタクトセンターソリューション市場の調査(2025年)」(2024年度1兆517億円) https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3953
- BOXIL Magazine「電話代行(コールセンターアウトソーシング)の費用相場」 https://boxil.jp/mag/a8395/
- ステップワイズ「不動産・賃貸管理コールセンター 24時間対応の電話代行」(月額23,100円〜・超過1件420円) https://stepys.com/lp/for-realestate/
- アスピック「IVRyとは?料金や機能・特徴を解説」(月額2,980円〜) https://www.aspicjapan.org/asu/service/14452
- IVRy「不動産向け電話代行サービス」解説コラム(12b) https://ivry.jp/column/telephone-service-real-estate/
- X Concierge 価格ページ(1戸390円/月・税別) https://aiconcierge.jp/fee/
- PKSHA Technology 導入事例「レオパレス21」(応答率2割向上・コスト2割減) https://aisaas.pkshatech.com/success/leopalace21/
- 賃貸トレンド(全国賃貸住宅フェア)「入居者アプリtotonoで仕事量もコストも削減」(125社・25万DL・電話一次対応8割減・DL率75%) https://trend.zenchin-fair.com/archives/23007
注: [6][11][13][14][15]など事業者由来の数字は各社の自己申告値です。金額は時点・条件により変動するため、契約前に必ず各社の最新の公表情報をご確認ください。